書評 その2 (『政治の世界 他十編』丸山眞男著 岩波文庫)

 本の題名がよくない。そして帯に書かれている引用も陳腐。これでは買う人は多くないだろう。この二点で大きな失敗をしている。

 けれど内容は非常に優れている。やはり偉大な思想家の文章というのは素晴らしい。

 50年以上前に書かれた文章とは思えないほど現代でも通用する。読者が右の人であっても左であっても参考になるところ、教えられることがあるはず。

 丸山眞男は後半生沈黙してしまった。本書に収められた文章は沈黙以前のもの。後に丸山が夜店とよぶ範疇に属するもの。沈黙の理由は素人には窺い知ることは出来ないけれどやはり60年安保で考えることがいろいろあったのではないかと推測する。